第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「ハハ…、おかしなことを言うね。樹が話せるわけないじゃないか。」
他愛もない冗談だと思ってデンは聞き流したが、ローは自分自身で言った言葉にハッとした。
そうだ、確か世界樹ってヤツは…。
「イヤ、話せる。」
どうして忘れていたんだろう。
自分はその事実を知っていたのに。
「…? なに言ってるんだい、ロー君。」
冗談で言っているのではないとわかったデンは、いよいよ首を傾げた。
「世界樹ってのは言葉を話せるはずだ。俺は昔…、言葉を交わしたことがある。」
あれはいつのことだろう。
ずいぶん昔の話だ。
「え、ロー。世界樹を見つけたことあんの?」
「ああ…。」
けれど、どうやって見つけたのか、どうして話すことになったのか、まるで思い出せない。
ああ、そうだ。
確かあの世界樹は、毒を発する樹だったはずだ。
だからなのだろう。
知らないうちに、記憶障害を引き起こしているのだ。
モヤモヤとした想いが消えないけど、今はそんなことを気にしている時ではない。
「他の世界樹は、言葉を話したっていうのか?」
陽樹 イブしか世界樹を知らないデンは、信じられない気持ちで呟いた。
「そういえば、母さんが会った世界樹も、言葉を話したって言ってたな…。」
「モモ君も世界樹を知っているのか! 世界にはそんな多くの世界樹が存在しているんだね。」
ローの言う世界樹とモモの言う世界樹が同じものだなんて気がつきもせずに、話は進んだ。
「じゃあ本当に、陽樹 イブも話せるかもしれないのか…?」
事件解決に向けて、新たな糸口を掴みかけた時、事態は大きく動いた。
ピカ…ッ
「「……!?」」
見間違いなんかじゃない。
今、確かに根が光った。