第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
その頃、ローたちは洞窟の最奥まで到達していた。
先ほどよりも樹の中心部に近づいただけあって、根は太くしっかりしたものになった。
しかし、いくら調べてみても、今回の事件の原因となるものは見つけられない。
「…わからないな、一応根っこから検体をとって病に罹っていないか調べてみようか。」
眉を寄せながらそう呟いたデンは、ナイフを取り出しおもむろに根の一部を削った。
「それでもわからなかったら、どうすんの?」
「そしたら…、あとは樹の本体を調べてみるしかないな。」
陽樹 イブの本体は地上にある。
それも、聖地マリージョアの麓だ。
魚人を捕らえ、奴隷とする天竜人がいる かの聖地で、陽樹 イブを調べさせてもらえるのだろうか。
民間人である自分には、とても無理だ。
少なくとも王家に頼るしかないだろう。
しかし、現国王ネプチューンも政府に良い印象は持っていない。
国の一大事とはいえ、果たして調査は可能なのだろうか。
(オトヒメ様がいらっしゃれば…。)
今は亡き王妃は、かつて天竜人と共に地上へ赴き、リュウグウ王国の世界会議参加権を勝ち取った強者だった。
もし彼女がいてくれたならば、今この時、状況は大きく違っていたはずだ。
「あ、そうだ。ローの能力で原因がなにか調べらんねーの?」
オペオペの能力には、病の原因を突き止められる“スキャン”という力があったはずだ。
「バカ言え。こんなでっけェ樹、包み込めるほどの“ROOM”が張れるか。」
ローの能力は“ROOM”と呼ばれるサークルの中でしか使えない。
加えて“ROOM”の大きさには限度があり、あまり大きすぎるものを張れば、命を削ることとなる。
「面倒くせェな、なにが原因なのかコイツ自身が喋ることはできねェのか。」
普段、人間の患者しか診ることのないローには、言葉の話せない患者がまどろっこしくて仕方がなかった。