第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
それからモモは、ポツリポツリとローについて話し始めた。
モモが想う、彼の好きなところ。
「優しいところが、すごく好き…。」
頬を染め、俯きがちにそう言う彼女は、同性のしらほしから見ても可愛かった。
(ロー様は、優しいのですね。)
こんなことを言うのはアレだと思うが、正直、そんなふうには思えなかった。
しらほしから見るローは、怖くて冷たいイメージだ。
でも、それだけじゃないことも知っている。
常に鋭い視線でとても愛想が良いとは言えないローだが、モモに向けるものだけは、眼差しの中に温かみを感じた。
モモのことをいつも気にしているようだったし、仕草ひとつにしたって、とても優しい。
「わたしが勝手に好きなだけだから…。」
モモはそんなふうに言うけど、それはどうだろう。
ここに来るまで、ずっと2人の様子を見ていたが、モモが一方的に好意を持っているという感じには見えなかった。
むしろ…。
(わたくしにはロー様の方が、モモ様に恋していると思えましたが…。)
他のみんなにはそんなことないのに、特定の異性にだけ優しい。
それはしらほしが考える恋愛の定番だと思っていた。
(恋愛とは、難しいのですね。)
「誰にも言わないで、しらほし…。わたしはただ、想っているだけでいいの。」
伝えられなくていい。
叶わなくていい。
そんなことを言うモモは、やはり少し寂しそうだ。
(本当にそれで、いいのでしょうか…。)
モモには幸せになってもらいたい。
でも、彼女の背中を押すような力は自分にはなかった。
なんとかモモに元気になってもらいたい。
こんな時、どうしたらいいんだろう。
ふと、海の森でモモが歌を唄ってくれたことを思い出した。
慌てふためくしらほしを落ち着かせるための歌だったが、不思議と元気が出たものだ。
(わたくしも…。)
モモのように歌を唄おう。
決して上手じゃないけれど。
しらほしに唄える歌は、ひとつしかない。
そういえば、あの歌も誰かを想う歌だった。
大きく息を吸い、思い出の歌とは少し音程がズレた歌声を響かせた。