第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「なぜ、泣くのです…?」
しらほしには、モモの涙の理由がわからなかった。
泣き虫な自分はよく泣くけど、泣く理由は大きく分けて3つだ。
悲しいとき、辛いとき、そして嬉しいとき。
でも彼女の涙は、そのどの理由でもないような気がした。
「好きだから…、好きだから涙が出るの。」
「誰かを好きになると、涙が出るものなのですか?」
しらほしにも好きな人はたくさんいる。
でも、恋をしたことはない。
例えば、ルフィのことは大好きだけど、それが恋かと聞かれれば違うと思う。
「わからない…。わたし、誰かを好きになったのは初めてだから。」
「え…。」
それは…、どういうことなのだろう。
モモにはコハクという子供がいる。
そしてその父親は、ローではなかったはずだ。
それなのに、誰かに恋をするのは初めてだとモモは言う。
明らかに矛盾しているのに、しらほしにはそれがどういうことなのか聞くことができなかった。
自分の過去にたくさんの出来事があったように、きっとモモにもいろんな過去があるのだろう。
そこに踏み込むべきではない。
だからしらほしは、心に浮かんだ疑問には触れず、素直な気持ちだけを口にした。
「羨ましいです。わたくしには泣くほど恋しい方はおりませんから。」
いつか現れるだろうか、こんな弱虫の自分にも。
「お聞かせください、モモ様。ロー様の好きなところを。」
「え…。」
ローの好きなところ?
そんなの、いっぱいありすぎてわからない。
「少しずつでも構いませんわ。皆様が戻ってくるまで、まだまだ時間がありますもの。」
モモの涙は、決して嬉しいものではない気がした。
だから、彼女が気持ちを少しでも吐き出せるなら、聞き役に徹してあげたいと思った。
だって、お友達ですもの…。