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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第8章 嫉妬




「それで、なにか用かい?」

「薬草の種と苗を分けて欲しくて…。」

「おやすいご用さ、ついておいで。」

気さくな主にホッとしながら、後をついていく。


「苗はそこに植えてあるのがそう。種はあっちの倉庫。好きに見なよ。」

その言葉に甘えて菜園内を物色した。

(月桂樹、チコリー、サフラン、セージに茴香、高麗人参まである…!)

今すぐに使えそうな苗から希少性の高い薬草の種まで、宝の山だった。

「う…。よ、予算が。」

希少性の高い薬草は当然、値段も高い。

しかしこの機会を逃せば、そうそうお目にかかれるものではない。
ここは恥を忍んでローに頼み込むべきか。

「いいよ、持ってきな!」

後からポンと肩を叩かれる。

「え?」

「あんた、昨日薬屋に薬草を売りに来た子だろう。」

他にもいるだろうが、確かに自分もそのひとりだ。
頷くモモに、主は嬉しそうに笑った。

「だと思った。今朝早くに薬屋があんたの持って来た薬草を見せびらかしに来てよぉ。嬉しかったね! あんなに立派に育てられる子がいるとは!」

自分の育てた子を褒められるほど、嬉しいことはない。
モモははにかんで笑った。

「だから、好きなの持ってきな! あんたなら大切に育ててくれるだろ。」

「え、そんな…! できません。」

それとこれとは話が違う。
彼だって生活があるだろう。

「俺がいいって言ったらいいんだよ。」

主はモモがチェックしていた苗と種をあっという間にまとめてしまい、手持ちのバスケットに詰め込んでしまった。

「いや、ほんとに悪い…--。」

「それでさ、ちょっとコレも持ってってよ!」

ついでとばかりにグイッと種袋を押し付けられる。

「……? 見たことのない種ですけど、なんです?」

「俺が改良した食虫植物!」

「……は?」

食虫植物とは蝿や小虫を食べる、あの肉食植物のことか。

「あの、わたしは薬剤師なんですけど…。」

残念ながら植物園を営む気はない。

「わかってるって! でも、コイツの良さを誰もわかってくんねぇんだ。あんた、ちょっと育ててみろって、な?」

すごい可愛いんだ!と力説されれば、もう頷くしかない。

とりあえずモモは有り金を全て叩いて、希少な薬草と珍妙な食虫植物の種を手に入れた。



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