第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
それから暗い洞窟内を僅かな光で照らし、必死に調べたけど、特にめぼしい発見はできなかった。
そもそも、デンと違って陽樹 イブの正常な姿をよく知らないモモは、今の樹の根を調べても、なにが悪いのかさっぱり見当がつかない。
頼みであるユグドラシルの知恵も、モモに世界樹の情報を教えてはくれない。
ユグドラシルがモモに授けたのは、世界の植物の“薬剤師として役に立つ知恵”だから、それに関係のないことは、いくら世界樹が植物でもわからないのだ。
「うーん、これはもう少し奥に進まないとダメかな…。」
同じように世界樹を調べていたデンも、やはり原因がわからないようで頭を掻きながら言う。
「奥、ですか…。」
彼が言うように、洞窟にはまだ先があった。
しかし、ここから先は道がかなり狭くなっており、しらほしとメガロは通れそうにない。
加えて、細い道は海水で埋まっているため人間では息が続かないだろう。
そうなるとデンひとりしか先に進めなくなる。
不安げなモモの視線を察して、デンはバブリーサンゴを取り出した。
「大丈夫さ。シャボンで身体を包めば、キミたちでも海に潜れるよ。しらほし姫とメガロ君はここで待っていてもうことになるけどね。」
呼吸はどうにかなっても、身体の大きさだけはどうしようもない。
「そんな…、わたくしはこの先に行けないのですか?」
「ごめんなさい、しらほし。少しここで待っていて。」
ショックを受けるしらほしを宥め、モモはバブリーサンゴを取り出す。
自分の身体を包むためのシャボンを出そうと、サンゴの突起を押そうとした時、手の中のサンゴが奪われた。
「あ…ッ」
奪った本人を見上げると、これまた超絶不機嫌な目で見つめ返された。
「ロー…、それ、返して?」
なんでそんなに不機嫌なのかわからず、内心びくびくしながらも手を差し出した。
「返すわけねェだろ、バカか? お前もここで留守番だ。」
「ええッ!?」
思ってもみない言葉に、思わず大きな声で叫んでしまった。