第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
しばらくすると海底の隅に洞窟の入口が見えてきた。
どうやらあれが、デンの言っていた海の森へと続く洞窟らしい。
洞窟の前まで行ってみると、入口は意外に大きく、しらほしが入れるくらいのスペースがあった。
「うう、なんだか恐ろしゅうございます…。」
「大丈夫よ、しらほし。」
洞窟の不気味さに怯えるしらほしを、一瞬このまま連れて行っていいものかと悩んだが、今さら彼女だけを除け者にはできない。
なにかあったら、自分が守らないと…。
たいした力もないくせに、気合いだけは1人前にして、一同は洞窟内部に入った。
「わ…、さすがに暗いわね。」
家や建物があれば、生活のための明かりがチラホラ見えたが、洞窟内ともなればそんな明かりに頼ることはできず、ランタンの明かりだけが唯一の照明となった。
メガロに乗っているモモですら不気味に感じるのだ。
自力で泳ぐしらほしは、もっと怖いに違いない。
モモの運動神経では一緒に泳いであげることはできないけど、せめて彼女の身体に乗って話し相手にでもなろうか。
そんなことを考えて、バブリーサンゴを手にメガロの背から立ち上がろうとした。
ガシリ。
しかし、立ち上がる前にローに腕を引かれ、ガクンと膝をついてしまう。
「な、なに…?」
急に腕を引っ張られては驚くではないか。
びっくりした目を向けると、彼は眉間にシワを寄せ、機嫌悪そうにこちらを睨む。
「なに、じゃねェよ。さっき言ったことをもう忘れたのか。」
「え…。」
なんのことか思ったけど、すぐに“ちょろちょろするな”と言われたことだと気がついた。
「ち、ちょっとしらほしのところへ行こうとしただけよ。」
別にふらふらどこかへ行こうとしたわけじゃない。
「俺は“少しでもちょろちょろしたら承知しねェ”と言ったんだ。」
意味をはき違えるなと言い直された。
「でも、しらほしが…。」
「アイツにゃ、デンがついてんだろ。お前はここにいろ。」
ほんの少し向こうに行きたいだけなのに、それすら許してくれない。
ローの心配性は、今も昔も健在だ。
「モモ様、わたくしは大丈夫です。」
しまいにはしらほしに気を遣われ、モモはなんともいえない気分になった。
ああ、この病気だけは本当に治ってくれればいいのに…。