第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「それで、過去に陽樹 イブが光を失ったときは、どのように解決したのです!?」
それさえわかれば、国民の不安も、モモにかけられた疑いも、全て晴れるのだ。
しかし、しらほしの期待とは裏腹にデンは表情を曇らせた。
「それが…、詳しいことはわからないんですよ。なにせ、昔話だったんでね。」
「そんな…。」
ガックリとうなだれるしらほしの頭をモモは優しく撫でる。
「そう落ち込まないで、しらほし。少なくても、解決方法があるってことがわかったじゃない。」
陽樹 イブは、今朝までは確実に輝いていたのだ。
それこそが過去の事件を解決したという証拠。
ならば今回も、きっとなんとかなる。
楽観的すぎるかもしれないけど、絶望に打ちひしがれるよりも その方がずっといい。
「待て、その資料にはどう解決したと書いてあるんだ。」
いくら昔話とはいえ、オチもない話を研究資料に書き留めないだろう。
「ええっと、なになに…。」
ローの言葉に、コハクは資料を覗き込んだ。
「陽樹 イブが光を失った翌朝、魚人島にはいつも通りの朝日が差し込んだ。おそらく、地上の太陽が日蝕、もしくは厚い雲に覆われており、十分な太陽光が得られなかったのだろう…だってさ。」
「「……。」」
あまりにも雑なオチに一同沈黙した。
いやだって、日蝕は太陽が隠れるだけで周囲は暗くならないし。
それにいくら雲が厚くたって、そんなことでいちいち世界樹が光を失っては、魚人島はいい迷惑だろう。
チラリとみんながデンを一瞥した。
「…いや、さ。その頃は日蝕だの雲だの言われてもわからなかったんだよ。」
海底暮らしの魚人には、地上の勝手などわからない。
「…まァ、うまくいきゃ明日の朝には元通りの可能性があるってことか。」
ならば、とりあえず朝を待ってみようか。
しかしローには、朝になっても太陽光は差し込まない予感がしてた。
ただの勘だが、こういう時の自分の勘が残念ながら外れないことをローは知っていた。