第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
すぐにコハクがデンとローを呼びに行き、全員が庭に揃った。
「どうしたんだい、なにかわかったのか?」
なにか進展があったのだと察したデンの問いかけに、モモは大きく頷いた。
けれど、問いかけたいのはこちらの方だ。
なぜなら、ここの資料は全て彼のものだから。
モモは手に持った資料を、みんなに見えるように広げてみせた。
「デンさん、ここに記載されていることですが…。これはどういうことなんです?」
そこに記載されていたことは、数百年前、陽樹 イブが突如地上から伝わる太陽光を放たなくなったという記述だった。
「これ…、今回のことと同じです! 過去にも同じ出来事があったということですかッ?」
けれどそんなこと、国王も文官も、誰も言っていなかった。
いくら昔のことだとはいえ、もし本当にそんなことがあったのなら歴史上に残ってもいい出来事だ。
「デン様、これはいったい…?」
しらほしに詰め寄られ、デンは頭をガシガシ掻きながら「思い出した!」と叫んだ。
「そうだ、これは僕が海の森の研究を始めたばかりの頃に聞いた逸話だ。」
あれはそう、10年以上前のこと。
海の森に興味を持ったデンは、あらゆる森の逸話を探すところから研究を始めたのだ。
長きにわたり、魚人島を照らす陽樹 イブには様々な説がある。
それをひとつひとつ集めたものが、モモの持つ資料だった。
そして確かに“陽樹 イブが光を失う”というそんな逸話もあったのだ。
「この話を知った当時は、そんなことありえないって思ってたんだけど…。」
昔の話というのは、どうしたって事実をねじ曲げたものが多い。
だからこの話も、そんな嘘話のひとつだと思っていたのだ。
「だが今、実際に樹は光を失ってんだ。その昔話ってやつも真実だった可能性が高いな。」
きっと、ローの言うとおりなのだろう。
陽樹 イブは、過去にも光を失ったことがあるのだ。
だとしたら、原因と解決策もおのずと見えてくるのではないか。