第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
モモは目を瞑ってしらほしの歌を聞いた。
誰かの歌を聞くのは、いつぶりだろうか。
耳を澄ませて聞き入っているうちに、歌は終わりを迎えた。
「……終わりです。」
「すごく素敵な歌…。聞かせてくれてありがとう、しらほし。」
心からのお礼を言うと、しらほしは照れたように笑った。
「母が唄っていた歌は、もう少し違う音程のはずなんですけどね。」
本来の歌をモモに聞かせられなかったことだけが、残念でならない。
「十分素敵だったけど…。楽譜とかが残っていたら良かったのにね。」
「はい…。」
母の歌は、口ずさむ程度の歌だったので、楽譜などたいそうなものに残ってはいない。
でも、こんなに恋しくなるのなら、音痴な自分のために楽譜を残して欲しいとお願いすれば良かったと後悔をする。
母の歌はもう、しらほしの記憶の中にしか存在しないけど、それでもそのカケラをモモに聞かせることができて良かった。
そんなしらほしの様子を見て、モモも満足する。
良かった、しらほしにとっての歌が、悲しいだけのものじゃなくて…。
そうして2人が休憩とも言えるひと時を過ごしていた時、家の中からコハクが出てきた。
「なぁ、母さん。この資料に書いてること、見てくれない?」
「え、なぁに。」
コハクから受け取った紙の束には、目を見張る記述が書かれていた。
「なに、これ…。これが本当だったら…。」
「モモ様、そこにはなんて書かれているんです?」
しらほしが尋ねたけど、モモはそれに答える間も惜しんでコハクに告げた。
「…デンさんを呼んできて!」
この資料は彼のもの。
今、この魚人島で海の森を一番理解しているのは、やはり彼だ。