第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
デンは空を仰ぎ、まるで夜のような暗闇を眺めた。
「陽樹 イブのことというのは、この光を失った事態のことですね?」
「…はい。」
この状況で陽樹 イブのことといえば、誰であってもそのことだとわかる。
しかし用件はわかっても、デンは首を傾げた。
「確かに僕は海の森の研究者で、陽樹 イブのことをこの国で一番よく調べていると自負していますが…。」
あくまでそれは自負。
研究者なら、誰でも自分が一番だと思うものだろう。
それは、王城の研究者たちも同じはず。
彼らがデンを頼るとは思えなかった。
それに…。
「わざわざしらほし姫が僕に依頼をする理由が、いまいちわからないんですが。」
普通は兵や文官が来るものだ。
国の一大事とはいえ、王女がわざわざ訪れるなど聞いたことがない。
「それは…。」
「それは、わたしが説明します。」
言いにくそうにするしらほしに代わって、モモが話を引き継いだ。
それから海の森で起こったこと、そして王城で起こったことを全て洗いざらい話した。
本当は王城で犯人扱いされたことは隠した方が良かったのかもしれないが、協力を申し出てくれたデンに隠し事はしたくなかった。
それでもし、デンが協力を渋ったり、やはり原因はモモにあると言うのなら、その事実を受け入れるつもりでいる。
しかし、モモの心配をよそに、デンは王城の文官たちに怒りを露わにした。
「なんてことだ…! まったく、あの陽樹 イブが人間に触られたくらいで光を失うもんか。王城の研究者ときたら、原因がわからないものだから、キミに罪をなすりつけようとしているなッ」
そんなヤツら、研究者の風上にも置けない。
ならば自分が、なんとしても原因を解明してみせる。
「姫様、モモ君、陽樹 イブのことも船のコーティングのことも、僕に任せてくれ!」
どうやらモモの話は、デンの研究者心に火をつけたようだった。