第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「きゃ…!」
目玉が飛び出さんばかりに驚くデンの表情に、彼の前にいたモモの方がびっくりした。
思わずローの背に隠れる。
そうか、しらほしはお姫様だから、普通はこんなに驚かれるものなんだ。
若干、しらほしが王族だということを忘れていたモモは、その尊さを改めて認識する。
「ひ、姫様! なぜこのようなところに…!?」
数ヶ月前の一件から、しらほしが自由に外へ出られるようになったのは、すでに周知の事実。
しかし、まさか自分の家に訪ねてくるなどとは思ってもみなかったので、デンは心臓が飛び出るような思いだ。
「突然すみません…。実は、デン様に助けていただきたいことがございまして。」
「僕に…?」
急な展開に目をパチクリとさせるデンだったが、高貴な客人を玄関先に立たせたままであることに気がつき、ハッとする。
「ああッ、立ち話をさせてしまってすみません! とりあえず中に…、いや、しらほし姫をこんな汚い家の中に入れられないな…。」
それ以前に、しらほしはサイズ的に家に入れないんじゃないかな…。
そんなことを思ったが、あたふたと慌てるデンが不憫だったので、余計な突っ込みは入れないでおいた。
結局、モモたちは家の庭へと通されることになった。
「それで、僕になにかご用ですか? 僕に手伝えることなら、いくらでも協力しますよ。」
デンが出してくれたお茶を一口啜りながら、しらほしが用件を切り出した。
「あの、それが…。陽樹 イブのことなんです。」
「ああ…。」
実は言うと、用件を聞く前からそうではないかと思っていた。
デンとしらほしは顔見知りではあるが、こんなふうにお茶をする間柄ではない。
そんな姫が自分に「助けてほしい」と言うようなことは、それしかないからだ。
現に陽樹 イブは今、誰が見ても異常事態だとわかる。
実際、デンもたった今、原因を解明しようと動き出すところだったのだ。