第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
竜宮城を出たしらほしは、モモたちを抱えたまま、まるで夜のような街を漂う。
「それで、どこに行くんだよ。どっかアテでもあんの?」
原因を解明するって言っても、アテもなくふらふらしたってなにも解決しない。
「えっと…、一応はあります。」
知り合いの少ないしらほしだが、植物学者にひとりだけ心当たりがある。
それも、陽樹 イブについて長年研究している人物だ。
「海の森の研究者、デン様のところへ行きましょう!」
「お城の外にも海の森を研究している人がいるの?」
竜宮城内には、国王お抱えの植物学者が数人いるようだったが、一般人にも研究者がいるとは思わなかった。
なぜなら、植物学者の研究というのはたいがいお金にならないから。
お金を出してくれるスポンサー無しでは、研究を続けることは難しい。
同じ植物学者でもあるモモにはよくわかる。
幸い、モモにはメルディアというスポンサーがいたので研究費用に困ったことはなかったが。
「デン様は船大工でもあるんです。街はずれにお家があるはずなので、会いに行きましょう。」
副職として船大工をしているのなら、収入源に困ることはないのかもしれない。
どちらにせよ、変わった人物には違いないが…。
「船大工か…。ちょうどいい、ついでに俺たちの船もコーティングしてもらうか。」
剥がれてしまった海賊船のコーティングをもう一度施工しなければならなかったので、船大工を探す手間が省けた。
「ていうか、ベポたちにはなんの連絡もしないで平気なのかよ。」
自分たちは魚人島の状況がわかってるからいいけど、他のみんなは今頃どうしているだろう。
「連絡しようにも、手段がねェ。アイツらのことだ、適当に船に戻るだろ。」
たいして心配もしていなさそうなローの態度に、コハクは「ならいいけど」と呟いた。
きっとローと同じくらい、他の仲間たいもローを心配していないのだろう。
その信頼が、羨ましく思えた。