第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
モモたちを胸に抱いたしらほしは、部屋を飛び出してそのまま城の勝手口から外へ出た。
ちなみに海に覆われている城の外には空気がないので、当然モモたちは息ができなくなる。
「「ガボボ…ッ」」
「あ、みなさま…ごめんなさいッ。メガロ!」
「シャシャ!」
しらほしの呼びかけに応じたメガロは、口の中から小さなサンゴを取り出す。
“バブリーサンゴ”だ。
このシャボンを吹き出す不思議なサンゴは、この魚人島ではなくてはならない代物である。
カチリと突起を押すと、空気をふんだんに含んだシャボンが生まれ、モモたちを包む。
「ぷは…ッ」
「ハァ、ハァ…死ぬかと思った。おい、ロー、大丈夫かよ?」
「……ッ」
悪魔の能力者の特性として、海にもっとも弱いローは、これまでにないほど苦しそうだ。
息ができないだけでなく、身体の力も抜けてしまうらしい。
「ロー、平気?」
ゼェゼェと荒い息を吐く彼をモモとコハクが気遣う。
「……ッ、心配しすぎだ。このくらい、なんでもねェ。」
そうは見えないんだけどな…。
弱みを晒すのが嫌なのか、必死に強がるローの背をモモは黙ってさすった。
「そもそもお前、どういうつもりだ。」
ようやく息が整い始めたところで、ローはしらほしをギロリと睨んだ。
「も、申し訳ございませんッ。みなさまが水中で息ができないことを忘れておりました…。」
「違ェ、そのことじゃない。どういうつもりで城を飛び出したんだって聞いてんだ。」
それはモモも知りたいと思っていた。
あんなことをしてしまっては、あとでしらほしが怒られてしまう。
「陽樹 イブが輝きを失ったのは、モモ様たちが原因ではありません。」
「しらほし…。」
王城の人たちは誰もそんなことを言ってくれなかったけど、彼女だけは信じてくれてとても嬉しかった。
「でも、アイツらはそう思ってないじゃん。」
しらほしは3人を抱えながら海中を泳ぎ、先ほど決意したばかりのことを口にする。
「だったら納得させるまでです。…わたくしが、原因を見つけてみせます!」