第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
ああ、どうしよう。
このままではモモたちが捕まってしまう。
『抵抗もなにも、捕まる理由がねェ。』
わかってる。
みんな混乱しているのだ。
魚人の太陽である陽樹 イブの輝きを失って。
なにか原因を決めつけないと不安で仕方がないから、モモたちを犯人にしているだけ。
『…世界樹ってのは、触るだけで光を失うようなヤワなモンなのか。』
違います。
しらほしが幼き時から知る世界樹は、強く逞しく、そして温かい樹だった。
彼らが原因じゃない。
それがわかっているのに、自分はただ、見ているだけなのか?
ルフィ様…。
「ええい、これは決定事項なのだ! 大人しく捕まらないのなら、力ずくで拘束するまで!」
衛兵たちの刃がまだ子供のコハクまでにも向き、それを見たローがついに攻撃体制をとった。
このままでは、しらほしの大切な人がたくさん傷つく。
ルフィ様、どうかわたくしに勇気をくださいませ…!
彼のような勇気ある行動力よ、心に宿れ。
「チ…ッ、面倒くせェ。」
近づいてくる衛兵に向かってローが手を広げ、能力を発動させようとする。
しらほしにはローがなにをしようとしているのかわからなかったけど、咄嗟に彼の身体を掴む。
「…!」
思わぬ方向から衝撃を受け、手の中のローが驚いたのがわかった。
「しらほし…!?」
隣でモモも驚きの声を上げた。
「なにをして……きゃッ」
もう片方の手で、モモとコハクを掴む。
この行動には、文官も衛兵たちもみんな驚いた。
「しらほし姫様、なにを…!?」
しかし、しらほしはその質問に答えず、3人を胸に抱くと強い眼差しで兵たちを見つめた。
「…どいてください!」
「は…?」
意味がわからず目を白黒させる兵たちに構わず、しらほしは愛鮫に声をかける。
「メガロ、行きましょう!」
「シャシャー!」
ダ…ッ
意を決して、大きな尾ビレで床を蹴った。
ドーン!
「うわー!」
「ひ、姫様~!?」
しらほしとメガロは共に体当たりをし、兵たちを突き飛ばしながら部屋を出る。
「お、お待ちください、姫様!」
「…ごめんなさい、待ちません!」
みんなが自分の言うことを聞かないなら、自分で原因を突き止めてみせる…!