第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
閉鎖された部屋を出て、みんなに内緒で散歩をしたドキドキ感。
そして、10年越しに母の墓前で手を合わせられた喜びを、今でも忘れない。
それだけでもルフィはしらほしにとって、ヒーローのような人だったのに、彼はそれだけではなく、しらほしに本当の自由をくれた。
バンダー・デッケンを倒し、身体の自由を。
母の敵であったホーディ・ジョーンズを倒し、心の自由を。
ルフィはしらほしだけでなく、魚人島そのものを救ってくれたのだ。
彼は、本当にヒーローだった。
自分にとっては、間違いなく。
「それから、ルフィ様は魚人島をナワバリとしていた四皇ビッグ・マムからナワバリ権を奪い取り、この島に自ら麦わらの海賊団の旗を立ててくださいました。」
おかげで、ビッグ・マムが要求する月に1度のお菓子奉納に怯えずにすみ、みんなが安心して暮らしている。
「ルフィ様は、リュウグウ王国の英雄なのです…!」
頬を染めて語るしらほしは、まるで恋する乙女のようだ。
彼女の話の中で、モモは会ったことのない“ルフィ”という人物を知ることができた。
「へー、なんだかすげぇヤツなんだな、ソイツ。」
モモともローとも違い、ルフィのことをまったく知らないコハクは、感心したように話を聞いていた。
「まァ、麦わら屋ならそれくらいやるだろうな。」
ローはルフィのことを知っているから、納得した様子だ。
しらほしにとっては、ヒーロー。
コハクにとっては、知らない男。
ローにとっては、よく知る同盟相手。
そして、モモにとっては…。
「そういえば、モモ様はどこかルフィ様に似てらっしゃいますね。」
「え…。」
何気なく言われた言葉に、絶句する。
でも、それはルフィに似ていると言われたことに驚いたのではない。
『…なんかお前、俺の弟に似てんだよな。』
昔、同じことを言われたからだ。
しかし、しらほしの言葉に顔をしかめたのはローだった。
「は…、どこがだ。人魚の目ってのは節穴なのか?」
自分の好きな女がルフィと似ているなんて、冗談じゃない。
もしもモモがルフィだったら…。
恐ろしくて、目を離せたものじゃない。
そんなことを一瞬でも想像してしまったことに、ローは盛大に後悔した。