第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
モモの知りたかったことは、聞かずともしらほし自身が話し出してくれた。
「ルフィ様は、ここからわたくしを連れ出してくださったのです。」
「連れ出した?」
「はい…!」
ルフィとの出会いは、まるで昨日のことのように思い出せる。
食事の匂いにつられた彼は、しらほしの部屋にやってきた。
侵入者であるルフィを駆けつけた見張り兵に突き出さなかったのは、彼がメガロの命の恩人であったのと、純粋に外の世界から来た人間と話してみたいという好奇心。
10年もの間、しらほしが部屋に閉じ込められっぱなしであったことを知ったルフィは、自分にこう聞いたのだ。
『おめぇ、行ってみたい場所とかねぇのか?』
そんなの、あるに決まっている。
幼い頃に見たっきりの街並みは、今はどうなっているだろう。
兵たちが噂する、マーメイドカフェとやらはどんなに楽しい場所なんだろう。
行きたい場所は、次から次へと思い浮かぶ。
しかし、もしひとつだけ行けるところがあるとすれば。
お母様…。
母が眠る、あの地へ行きたい。
『海の森…。』
しらほしの答えを聞いたルフィは、「ふーん」と興味なさそうに呟きながら、自分のために用意された食事を貪る。
そんなに聞き流さなくても…。
だいたい、聞いてきたのはそちらの方ではないか。
怖くて失礼な人。
それがルフィに対して思った、第一印象だった。
しかし、ルフィがそんな人間ではないことは、すぐにわかることとなる。
パンの一切れまで食べ尽くし、ゴクンと喉を鳴らしたルフィは、「よし!」と声を上げてこう言ったのだ。
『んじゃ、行くか。そこ!』
『え…?』
まるですぐ近くまで遊びに行くかのように、ルフィはしらほしの手を取る。
あの日、彼の手によって、しらほしの世界は一変したのだ。