第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
「皆様、ひとまず わたくしのお部屋においでくださいませ。精一杯のおもてなしをいたします。」
バタバタと文官たちが原因解明のために走り出す中、しらほしはモモたちを手招いた。
「うん…。」
本当なら、自分も陽樹 イブのことについて調べ回りたい。
でも、外から来た薬剤師風情がいたずらに首を突っ込むことは、彼らにとって迷惑でしかないだろう。
世界樹のことが気になって仕方がないが、そこは自制するしかない。
モモはウズウズとする胸の疼きを抑えながら、素直にしらほしについて行く。
「これ、そなたたち。直前まで海の森にいたのであろう。状況を説明せよ。」
後ろで高位の文官が しらほしの護衛をしていた兵を捕まえて事情を聞いている姿が目に入ったが、モモは黙ってそのまま大広間を後にした。
「ここがわたくしの部屋でございます!」
案内された部屋の扉は、まるで宝物庫かのように厳重なものだった。
ところどころ刃で傷つけたような跡があるのも気になる。
「なんだか…固そうな扉ね。」
「はい。わたくし、数ヶ月前まで命を狙われておりましたので、ずっとこの部屋を出られなかったのです。」
「え…?」
しらほしがあまりにサラリと言うので、一瞬事の重大さに気づくのが遅れた。
「さあ、どうぞお入りくださいませ。」
見張り兵が重々しい扉を開き、中へと通された。
しらほしの部屋は、外の扉の雰囲気とは違い、貝やサンゴで彩られたお姫様らしい部屋だった。
「シャ、シャ~!」
中へ入ると、大きなサメがしらほしを出迎えた。
「ただいま、メガロ。モモ様、この子が森で話したお友達のメガロです。」
しらほしからしてみれば、ぬいぐるみのように可愛いメガロだが、モモからすれば一飲みで食べられてしまいそうな巨大サメ。
「こんにちは、メガロ。」
おっかなびっくり挨拶をしてみると、メガロは「シャシャ~」と愛想良く微笑んだ。
あ、意外に可愛い…。
「すぐにお茶とお菓子のご用意をしますね。」
友達を部屋に招き入れられたことにウキウキなしらほしは、侍女にお茶と菓子を持ってくるように頼んだ。
しかし、あまり甘いものが得意でないローとコハクは、揃って渋い顔をしたのだった。