第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
なんだ、この歌は…。
聞いたことは、たぶんない。
モモが唄う歌は、いつも初めて聞く歌だから。
そもそもローは歌になんか興味がないのだ。
それだというのに、なぜだろう。
なぜ、この歌を知っているような気がするのか…。
『教えたくなったよ、変わらない夢を。聞いて欲しい話があるよ。頷いてくれたら、嬉しいな。』
ローの胸に、懐かしさが宿る。
遠い昔、この歌に呼ばれたような気がする。
確か…、そう。
あれは夢の中だったかもしれない。
『帰りたくなったよ、君のいる船へ。かけがえのない君に今、もう一度伝えたいから。』
けれどそれ以上、どれだけ思い出そうとしても思い出せない。
それがいつだったか、どんな夢だったか。
なにも思い出せない。
このもどかしさは…、なんだ。
ズキリと痛んだ頭に、こめかみを揉んで目をつむる。
『帰りたくなったよ、君のいる船に。聞いて欲しい言葉があるよ。受けとめてくれたら、嬉しいな。』
そしてゆっくりと目を開けば、優しく唄うモモの姿が。
暗闇の中でも、彼女のことだけは、見える。
モモが唄い終えると、あたりは水を打ったように静まり返っていた。
「しらほし、少しは落ち着いた?」
「は、はい…。モモ様、歌がとてもお上手でいらっしゃるのですね…。」
なんだか胸がドキドキしている。
お城の楽曲団の演奏でも、こんなにドキドキしなかったのに。
「これくらいしか取り得がないのよ。」
そんなふうにモモは言うけど、絶対にそんなことはない。
だって、彼女がしらほしの指を握ってくれているだけで、こんなにも安心するのだから。
この感覚、覚えてる。
つい最近感じたばかりだ。
(モモ様って、ルフィ様に似てらっしゃるわ…。)
どこも似たところなんてないのに、そんなことを思ってしまうくらい、モモとルフィの暖かさは似ていんだ。