第41章 消えた灯りと人魚姫の歌
『心の穴を埋めたくて、あなたの居場所を探した。出会いと別れが繰り返し、わたしの隣を駆けていくよ。』
「ひっく…、うぅ…?」
指先から温もりと一緒に、優しい旋律が聞こえてきたことに しらほしは首を傾げる。
これは、歌…?
『ダメな自分が悔しくて、強くなりたいと願った。強くもなれない現実に、ただ目を瞑って耐えてた。』
歌は、自分たちも唄う。
しかし今、モモが唄う歌は聞いたことがないものだった。
それは歌詞が旋律が…ということではなく、こんなに優しい歌を聞いたことがないという意味。
『君に、会いたいよ。』
『帰りたくなったよ、君が待つ船に。その姿を見せてくれたなら、何度でも走っていくから。』
不思議と心が落ち着いてくる…。
それは、しらほしだけでなく、周りの兵士たちも同じ気持ちのようだった。
『帰りたくなったよ、君が待つ船に。話したいことがたくさんあるよ。聞いてくれたら、嬉しいな。』
気づけば、みんなパニックだったことも忘れ、聞き入ってしまっていた。
『大切な日々はいつでも、当たり前じゃないんだ、きっと。くじけてしまう日もあるけど、ひとりで泣く夜はもうない。』
この歌を選んだのは、モモの気まぐれというよりも、なんだか運命のようだったから。
かつて1度、この歌をこんなふうに唄ったことがある。
そう、オバケの森、ユグドラシルの体内で。
あの時も、今みたいに真っ暗で、そして傍にローがいた。
同じ世界樹の近くで、同じ歌を唄うなんて、なんだか過去に戻ったみたいだ。
『君に、会いたいよ。』
『話したくなったよ、わたしが見る明日を。
傍にいてくれるなら、いつだって強くいられるから。』
あの時の記憶は、きっと今のローにない。
けれど、モモの中には宝物みたいに輝いてる。
ずっと、ずっと…。