第40章 深海の島と海の森
「そ、そんな大きなお声を出さないでください…。怖いです…。」
しらほしの瞳に、みるみる涙が溜まった。
その様子に無表情で平静を保つローとは対照的に、コハクは焦った。
「わ、悪かったよ。」
なにせ、女の子を泣かせてしまうなど、初めてのことだ。
とっさに謝ったけど、しらほしの嗚咽は止まらない。
(こういう時って、どうしたらいいんだ…?)
今まで友達がいなかったコハクは、こんな時どう対処したらいいかがわからなかった。
「あら、しらほし。また泣いているの?」
騒ぎ出した3人に気がつき、モモがやってきた。
「な、泣いてません…ッ」
うるうるとした瞳をモモに向けるしらほしは、必死に涙を堪えているようだった。
それがなんとも可愛らしい。
「ごめんなさい、この2人は口が悪いのよ。」
遠まわしにローとコハクに注意をする。
まあ、ローには言ったって無駄だろうけど。
「いえ…、わたくしが悪いのです。おふたりに失礼なことを言ってしまいまして。」
「……?」
しらほしがなにを言ったかは見当がつかないが、どうせたいしたことではないのだろう。
「そもそも、あなたたちが怖い顔するからいけないのよ。」
2人それぞれを見つめ、窘める。
「悪かったな、俺はもともとこういう顔だ。」
ローがふてぶてしくそう言うと、コハクもそれに同意した。
「オレだってそうだよ。そんなの、母さんが1番知ってるだろ。」
「う…。まあ、ね。」
なにせ産んだのはモモだから。
コハクが生まれつき目つきが悪いのは、赤ん坊の時からわかっていた。
しかし、それに驚きの声を上げたのは、さっきまで泣きべそをかいていた しらほしだった。
「まあ…! コハク様はモモ様のお子なのですか!?」
モモに子どもがいるとは思わなかったしらほしは、その事実に絶句した。