第40章 深海の島と海の森
なぜ、しらほしの口から麦わらのルフィの名が…?
その理由を不思議に思うけど、ルフィの名に反応したのはモモだけではなかった。
「な、なんと…! それは本当ですかな、しらほし姫。この者がルフィ殿の友達…!」
兵士たちもまた、ルフィの名に驚き、そして彼の“友達”であるローに目を向けた。
「間違いありません。わたくし、地上の新聞なるもので見ました。この方とルフィ様が、仲良く写真にうつってらっしゃるのを…。」
それは恐らく、ローとルフィが海賊同盟を組んだ時の新聞だろう。
仲良くうつっていたかといえば、微妙なところだが。
案の定、ローも微妙な表情をしたが、兵士たちが慌てて刃を下ろすので、黙ったままだった。
「これはこれは…ッ、ルフィ殿のご友人にとんだご無礼を!」
彼らの中では、ルフィがよほど大きな存在なのだろう。
彼の友達というだけで、態度を一変した兵士たちを見ればわかる。
「申し訳ありません、モモ様…。わたくしの兵が、ひどいことをしてしまって。」
「ううん、全然ひどいことなんてされてないわ。むしろわたしこそ、お姫様って知らなくて、失礼なことを言ってごめんなさい。」
ここまでくれば、しらほしが何者であるかわからないモモではない。
彼女は正真正銘、人魚姫だ。
本当なら王の娘であるしらほしに、こんな口を利くのも失礼だろう。
しかし、しらほしはふるふると首を振る。
「いいえ。どうかそのように仰らないでください。」
魚人島の人魚姫は、繊細でとても心優しい。
「お詫びといってはなんですが…、わたくしに海の森を案内させてくださいませんか?」
「え…?」
しかし、いくらなんでもお姫様に案内なんかさせられないだろう。
「ルフィ様のお友達と、お話がしたいのです。」
そう言われてしまうと、むげに断れない。
それにモモも、初めて会った種族、人魚のしらほしと話がしたかった。
ローをチラリと窺うと、モモの気持ちがわかったのか「仕方ねェな…」とばかりに頷いてくれた。
「ありがとう、しらほし。海の森を案内してくれる…?」
「はい…ッ、喜んで!」
そう言って微笑む彼女は、人魚でもお姫様てもなく、普通の少女のようだった。