第40章 深海の島と海の森
目の前の彼女は、モモの何倍もの大きさがあるというのに、まるで子供みたいに泣きじゃくった。
自慢じゃないが、モモは誰かに第一印象で好感以外持たれたことがない。
だからこんなふうに出会い頭に泣かれ、それなりにショックを受けた。
「ひ…、ひっく…。」
「あ、あの…。」
どうしていいかわからず、オロオロとしながらも、とりあえず彼女に声を掛けてみる。
「な、泣いていませんわ…!」
「え…。」
どうみたって泣いてるけど。
落ちてくる大粒の雫を避けつつ、モモは首を傾げる。
「わたくし…、泣き虫は卒業しましたから…!」
「そ、そうなの?」
明らかに卒業できてなさそうだが、それを言うとさらに泣き出してしまいそうだから言わないでおく。
「人間の方も…もう怖くはありませんわ。」
そう言いながら、泣き虫な彼女はグスンと鼻を啜った。
よく見れば、彼女はとても育ちが良さそうだ。
見知らぬ人間に驚いてしまうのは、当然かもしれない。
「えっと、驚かせてごめんなさい。わたしはモモ。海の森って広いのね。おかげで迷子になっちゃったの。」
「グスン…。わたくしは しらほしと申します。迷子の方でしたのね、わたくしったら…。」
しらほしと名乗った人魚は、ようやくその大きさ瞳から涙を引っ込めた。
「モモ様とおっしゃいましたか? よろしければわたくしが出口までお送りしますけど。」
道案内の申し出を受け、モモは悩んだ。
モモが行きたいのは出口ではないけど、きっとコハクのところへはローがとっくに着いているだろう。
もしそちらに問題があれば、ローが対処してくれているはず。
ならば、モモは大人しく出口に向かった方が2人と合流しやすいだろうか。
「じゃあ、お願いできる…?」
「はい、もちろんです!」
しらほしの厚意を感謝しながら受け取った時、森の奥からザワザワと複数人の声が聞こえてきた。
「姫様~……!」
……姫?