第40章 深海の島と海の森
コハクはこれから、どんどん大人になっていく。
ずっと女手ひとつでコハクを育ててきたモモにとって、男手というものはとても貴重でありがたかった。
それをローに求めてしまうのは、少しずうずうしいような気もするけど、弟子にさせてもらった以上、今さらそこを気にするのもおかしな話だ。
コハクに自覚があるかはわからないけど、彼がローをとても尊敬していることは、傍で見ているモモが1番よくわかっていた。
そこにあるのは父子の絆ではないかもしれないが、それでも確かな絆が存在することは間違いない。
モモはそれが嬉しくてしょうがない。
「…わぁ!」
ヒスイと共に、先に森の奥へ向かっていたコハクが声をあげた。
「……!」
それに反応したローとモモは、何事かと思って走り出す。
もしかして、なにか危険なことでも…?
人気の少ないこの森は、危ないことなどそうないはずだったのに。
ローは無意識に刀に手をかける。
「どうした…--!」
いち早くコハクに追いついたローは、そう問いかけながら、出くわした状況に目を剥いた。
人気のないはずの海の森に、武装した魚人と人魚がズラリと並んでいたから。
どう見ても一般人ではない。
姿格好からして、軍の兵士だ。
武器を持った魚人たちが こうもたくさんいれば、コハクが驚くのも仕方ない。
モモとコハクは、軍や兵士にいい思い出がないから。
「な、なんだよ、コイツら…。母さんを捕まえに来たのか!?」
「イヤ…、落ち着け。」
恐らくそれはない。
魚人島は政府の息などかかっていないはずだから。
では、なぜこんなに兵士が…?
「きゃあ!」
その時、自分の後ろを走っていたはずのモモが悲鳴をあげた。
「……!」