第40章 深海の島と海の森
お魚タクシーの背中にはシャボンで覆われたスペースがあり、人間やカナヅチでも水路を行き来できるようになっている。
タクシーに乗りながらヒスイを追う3人だったが、途中、水流に煽られてヒスイの身体が流されそうになったときなど、モモとコハクはヒヤヒヤしっぱなしだ。
行きたいところがあるなら連れて行ってあげるから、そんな無茶しないで…!
ヒスイは自分たちにとって相棒であり、家族だ。
その身になにかあってはと心配で仕方がない。
もしかしたらヒスイはずっと、なにかを訴えていたかもしれないけど。
こんな時、言葉というものの大切さを実感してしまう。
わたしたちが同じ言葉をしゃべり、意志を伝え合えるのは、奇跡に近いことなんだ…。
「この方角は…。」
どのくらいそんな追いかけっこをしていただろう。
ヒスイの行き先に心当たりがあるのか、ローが呟いた。
「こっちになにかあるの?」
ヒスイの目的が、ローにはわかったのだろうか。
「アイツがなにを目指しているかは知らねェが、このまま行くと海の森に着く。」
「え…。」
海の森とは、さっきローが言っていた観光スポットか。
なぜそんなところに…?
「海の森って、どんな観光スポットなの?」
「別に観光スポットなんかじゃねェよ。ただ、珊瑚や海藻の密集した地帯だ。」
「そうなの…。」
てっきりなにかヒントがあると思っていたモモは、手がかりなしの情報にガッカリする。
でも、ローはさっき海の森のことを「お前が好きそうだな」と言わなかっただろうか。
いったいどの辺が、モモが興味を持つと思ったのか。
その答えは、すぐに知ることができた。
「ただ、あの森にはお前の好きそうなモンがあるな。」
「わたしの好きそうなもの…?」
「陽樹 イブ。…魚人島を照らす、世界樹だ。」