第40章 深海の島と海の森
ちょろちょろと走るヒスイを追いながら、モモは前にもこんなことがあったな…と思っていた。
そう、あれは水の都ウォーターセブンでの出来事。
あの時もこんなふうに走り出したヒスイを追っていた。
そのせいで仲間たちとはぐれてしまい、仮面の男と出くわしたりして危険な目にあったっけ。
確か、あの時ヒスイは、1枚のカードに惹かれて走り出したのだ。
不思議な占いのカード。
そのカードの持ち主は、モモが勝手に友達だと思い込んでる“魔術師”バジル・ホーキンス。
彼の占いには、いろいろと助けられた。
『波乱に巻き込まれる』
『人の縁によって助けられる』
『1番の宝を手にする』
言われたことは、全て的中した。
別れ際、「また会える」と言われたけど、再び海賊となった今、本当に会える日がいつか訪れるかもしれない。
昔を思い出させるヒスイの行動。
あの時はカードに惹かれて。
ならば今度は、なにに惹かれてヒスイは走るのだろうか。
「きゅいッ」
可愛い鳴き声をあげて、ヒスイは水路で出来た連絡廊に突っ込む。
「おい、ヒスイ!」
コハクが止める間もなく、ヒスイは触角を器用に使って水中を進んでいった。
「ええっと、この水路はどうやって通ったらいいのかしら。」
たまに忘れてしまいそうになるが、ヒスイは植物だ。
空気がなくても水中に酸素があれば、呼吸ができる。
しかし、自分たちはそうもいかない。
いくら泳ぎが得意でも、息が続かないだろう。
ついでにいえば、ローは悪魔の実の影響でカナヅチである。
「オイ…。」
どうしようかと途方に暮れていると、ローが後ろから声を掛けてくる。
振り向けば、胴体に“タクシー”と書かれた大きな魚が停まっている。
お魚タクシーだ。
「追うんだろ? …乗れ。」
「…うん!」
一見、勝手にも思えるヒスイの行動だが、向かう先にはきっとなにかがあるのだとモモは知っている。
6年前は、素敵な出会いを。
果たして今回は、なにが待ち受けているのだろうか…。