第40章 深海の島と海の森
初めての人魚、魚人との出会いに心躍らせながら、モモたちは魚人島の街を歩いた。
「ほら、モモ! あそこに見えるのがマーメイドカフェだぜ!」
シャチが指差す方角には、人気店であることが窺えるほど繁盛したカフェが堂々と構えている。
中から出てくる客は、まるで夢の国から帰って来たかのように幸せそうだ。
主に男性客のようだが…。
あんなに鼻の下を伸ばしてデレデレになるなんて、中ではいったいなにが起きているのだろう。
行ってみたいけど、やっぱりちょっと行きたくないかも。
特に、ローと一緒には…。
あんなふうにデレデレになったローの顔を想像すると、なんだか胸がモヤモヤする。
もしかして、これが嫉妬というやつだろうか。
今まで感じたことのない初めての気持ちに、自分でもどうしたらいいのかわからなかった。
「ほらほら、早く行こうぜ!」
「う、うん…。」
待ちきれないのか小走りになる仲間たちのあとを重い足どりで追っていると、モモの視界に見てはいけない店の名前が目に入る。
「あッ、薬屋さん!」
ピタリと足が止まる。
「あーあ…。」
その様子を見て、コハクはため息を零した。
見つけちゃった…。
こうなってはもう、薬屋しか目に入らないことを知っているから。
薬と本に目がないのは、モモの悪い癖だ。
「ごめんなさい。わたし、ちょっと薬屋さんを見てくる。」
「ええ~、薬屋なんて後でいいじゃん!」
「今すぐ行きたいの! みんなは先に行ってていいから。」
だって、海底の薬屋になんてそうそう来れるものじゃない。
いったいどんな薬を扱っているんだろう。
果てなき探究心が疼きまくってしょうがない。
みんなに声をかけるやいなや、モモは薬屋に向かって突っ走った。
「ハァ…。」
そのあとを黙って追うのは、今も昔もコハクの仕事だ。