第40章 深海の島と海の森
こちらを見つめるローの視線が、なんだかもの言いたげだ。
「な、なに…?」
気になって聞いてみたら、ローは嫌そうな顔をしてぼそりと呟く。
「着るなよ。」
「え…?」
「コイツらの言うことを真に受けるな。あんな服、お前に似合わない。」
一瞬、なんのことを言われているのかわからなかったけど、すぐに人魚たちのファッションのことだと気がついた。
「…! 言われなくても、着たりしないわッ」
別に着たかったわけじゃないけど、そんなに面と向かって言われたら、いくらなんでも傷つく。
「ならいいが…。」
モモがあんな服を着て外をうろつくと考えただけで、なんだか胃のあたりがムカムカする。
もちろん、モモが自分にだけ見せてくれるというのなら、是非とも着て欲しいけど。
外で着るというのなら、話は別。
絶対にそんな格好はさせられない。
一方、2人の様子を見ていた仲間たちは、ズレの生じた会話にコソコソと話し合う。
(あーあ。あれって、たぶん船長のヤキモチだぜ…。)
(そのようだな。だが、モモにはそうは伝わってないぞ。ほら、見ろ、傷ついた顔をして…。)
(似合わないとか言うからッスよ。「俺が嫌だ」って素直に言えばいいのに…。)
(あ、キャプテンがこっち見てるよ。…すごい顔で。)
((!!))
一同が恐る恐る噂の主の方を見ると、ギロリと射殺さんばかりの目で睨むローの姿が。
ヤバイ、聞こえてたか…。
チラリとモモの方も伺ってみると、幸い彼女の耳には届かなかったようだ。
いや、でも。
いっそのこと聞こえてしまった方が良かったのかもしれない。
そうしたら、不器用な船長の本心が伝わるだろう。
恋愛初心者の船長を、仲間たちはどうにか応援したかったのだ。