第40章 深海の島と海の森
島の港に船を停めると、一行は早速街に向かって歩き始めた。
まずモモたちがたどり着いたのは、街の入口、人魚の入り江。
「あらー? 見ない人たち。外からのお客さんかしら。ようこそ、魚人島へ。」
「良かったら、後でマーメイドカフェにいらっしゃいよ。おもてなしするわ。」
パシャパシャと尾で水しぶきを上げながら、人魚たちは魅力的な笑顔で歓迎してくれる。
「……ッ」
「わー、すげぇ。人魚だ。ほんとに尻尾が魚なんだな。…って、どうしたの、母さん。」
本で読んだ通りの人魚の姿に納得したコハクは、隣で固まるモモに首を傾げた。
「ふ、服が…。」
「…服?」
衝撃を受けたように呟いたモモは、すぐにコハクの存在を思い出す。
「はッ、コハク! 見ちゃダメよ!」
「なに言って…むぐッ」
こちらを見上げていたコハクを抱え上げ、ギュッと胸に押しつけた。
だってだって、なんて露出度の高い服なんだろう。
魚の下半身は仕方ないとして、人型の上半身がもう、下着のような裸のような格好で…。
見てるこっちが恥ずかしくなる。
「母さ…、苦しい…。」
胸に埋まったコハクが呻くけど、こんな教育に悪いもの、とてもじゃないけど見せられない。
「おいおい、モモー。もしかして人魚たちの格好に戸惑ってんのか?」
「え、そうなんスか? でも、あれくらい普通っしょ?」
「え…ッ」
あれが、普通…?
だってほら、胸がかろうじて隠れているだけで、あとは全部肌が出ているのに。
「モモもああいうファッションしてみたらいいのに。きっと似合うぜー。」
「うぇ!?」
驚いて腕を緩めた隙に、コハクがスルリと抜け出した。
「そうだよねー。モモはいつも暑そうな格好してるから、もうちょっと薄着でもいいんじゃない?」
「ええッ!」
ベポにまで言われて目を剥く。
確かにモモは保守的な服しか着ないけど、毛皮モコモコのベポに言われたくない。
みんな、ああいう服が好きなんだ…。
もしかして、ローも…?
チラリと彼を見上げると、ローはこちらをジッと見つめていた。