第40章 深海の島と海の森
正直な話、モモに友達がいるとは意外だった。
いや、23という年齢からして、友達がいない方がおかしいのだけれど。
でも、閉鎖された無人島で息子と2人きりで暮らしていたことを考えれば、彼女には外の世界に友達がいないと思ってしまっても仕方のないことだ。
モモには友達が3人、いや5人いるという。
ローはモモについて、そんなことですらまだ知らない。
モモは、2つの小瓶を宝物だと言った。
ひとつは友達のビブルカードが入った小瓶。
しかし、もうひとつの小瓶には、なにも入っていない。
空っぽの小瓶。
「こっちは空のようだが…、これも宝物なのか?」
「……それも、宝物よ。」
気になったからそう尋ねてみると、途端にモモの表情が曇る。
それは聞かれたくないことだった…というよりも、嫌な過去を思い出してしまった…、そんなような表情。
そんな顔、見たくねェ。
モモのことならなんでも知りたいと思うのに、安易に尋ねてしまった自分に後悔が募る。
かといって、彼女は謝罪や慰めの言葉など求めてはいないだろう。
強がりなモモは、ヘタに気遣うとますます痛みをガマンしてしまう。
そんな意地っ張りなところがあることくらい、ローは知っている。
こんな時、好きな女にどう接するのが正解か。
その答えがわかるくらい、自分が恋愛上級者なら、もうとっくにモモを口説いてる。
わからないから、モモの表情ひとつでこんなに動揺しているのだ。
ちくしょう…。
気の利いた言葉ひとつ言えなくて、そんな自分に腹が立つ。
とにかく元気出せ、という想いを込めて、ぐしゃぐしゃとモモの頭を撫で回した。
「ちょ、もう…。」
モモはローの行動に面食らった様子であたふたとする。
でも、その表情は先ほどの落ち込んだものではなくなっていた。
多少乱暴でも、彼女の気を紛らわすことに成功して、ホッとする。
するとモモも、心境に変化が訪れたのか、ふわりとはにかむように笑った。
その笑顔が、ものすごく可愛くて…。
「……ッ」
不意打ちのような衝撃が心に刺さる。
お前、その笑顔…。
反則だろ?