第40章 深海の島と海の森
「これは友達のビブルカードよ。」
このビブルカードはメルディアのもの。
ローの質問に対して、モモは正直に答えた。
しかし、その答えに驚いたのはローの方。
「お前、友達がいたのか…?」
すごく意外そうに言われた。
きっと、友達がいそうに見えないと思われたに違いない。
「し、失礼ね! ちゃんといるわ、3人!」
「3人…。」
その微妙な数が、妙に現実味を帯びている。
「頑張れば、あと2人いるわ…。」
頭の中で、ドラム王国のドクトリーヌとチョッパーを勝手にカウントする。
ドクトリーヌは、またお茶くらい いつでも飲みに来ていいと言ったし、チョッパーとはそれなりに仲良くなれたと思っている。
懐かしいな、2人とも元気でやっているだろうか。
「そういうローこそ、友達いるの?」
そういえば、彼から友達の話など聞いたことがない。
「俺は無駄な馴れ合いはしない。」
「……。」
それってつまり、友達がいないってことだよね。
人のことを散々バカにしておいて…。
胡乱な眼差しを向けてみせるけど、ローは構わずもうひとつの小瓶に目を向けた。
「こっちは空のようだが…、これも宝物なのか?」
「……。」
空っぽな小瓶。
それを見ると、いつも胸が苦しくなる。
2年前まで、その中には確かに1枚のビブルカードが入っていたのだ。
それは、先ほど答えた3人の友達のうち、ひとりの青年のもの。
「それも、宝物よ。」
中身がなくても、ずっと宝物だ。
「……!」
突然、ローの大きな手のひらが頭に乗り、ぐしゃぐしゃと撫でられた。
きっと、モモの気分が少し沈んでしまったのがわかったのだろう。
いけない、こんな雰囲気にさせるつもりじゃなかったのに。
ローを心配させてはいけないと、落ち込む気分を振り払う。
ぐしゃぐしゃ…。
「ちょ、もう…。」
もう落ち込んでいないのに。
でも、こうして心配してもらえることが、触れてもらえることが嬉しくて、つい、はにかむように笑ってしまった。
するとその笑顔に引き寄せられるように、ローの顔が近づいた気がした。
(え……?)