第7章 昔の女
「これ全部、アンタが育てたんかい?」
ええ、と頷く。
「いい仕事してるねぇ、これくらいでどうだい。」
提示された金額に、これならばと了承する。
思っていたより高く売れた。
「他になにか用は?」
「生薬と、種か苗があると嬉しいのだけど…。」
「生薬ならあるけど、種と苗は菜園に行かないとないな。」
しかし残念ながら菜園はもう閉まってるとのこと。
明日出直すしかない。
「そう、残念。なら、芍薬と大棗、それから桃仁と紅花をちょうだい。」
殺菌、鎮静、強壮、血行促進にそれぞれ効果のある薬を選んだ。
あいよ、と店主は乾燥した生薬を袋に包んでくれる。
閉店間際にも関わらず、親切な店主に礼を言い、店を出た。
「ごめんね、お待たせ。」
「うんにゃ。良い薬、買えた?」
「ええ、とっても。だから安心して病気になってね。」
「オイオイ、そりゃねぇッス。」
ペンギンと2人、笑い合った。
来るときは落ち込んでいた気持ちも、思わぬ収入と収穫のおかげで少し浮上した。
(いいの、わたし…。薬剤師として必要とされるだけで。)
いいの。
その頃、酒場ではローとシャチ、メルディアが酒を交わしていた。
「ねぇ、シャチ。そろそろ気を利かしてくれてもいいんじゃない?」
「えッ!?」
「なんなら、良い子紹介するわよ。」
「い、いやぁ…。」
シャチはチラシとローを窺う。
この微妙な空気の中、シャチだってできればサッサと退散したいところである。
「…行ってこい。」
ローからGOサインが出た。
心で小さくガッツポーズをするも、ちゃんとローに釘を刺すのも忘れない。
(船長、モモを悲しませるようなこと、しないで下さいよね。)
そんな視線を送ったら、ギロリと睨み返された。
(当たり前だ、誰に言ってやがる。)
ローの返事に安心して、シャチは席を立った。
「じゃ、スイマセン。お先です。」
シャチにじゃあね、と手を振りながらメルディアは先ほどの目と目の会話に目ざとく気づいていた。
「なぁに、さっきのやりとり。」
「別にお前には関係ねェだろ。」
「あら、冷たい。」
メルディアは酒をひと口飲むと、ローの肩にしなだれかかる。