• テキストサイズ

セイレーンの歌【ONE PIECE】

第40章 深海の島と海の森




「…子守歌?」

一瞬聞き違いかと思ったが、ローの問い返しにもモモは「うん」と頷いてみせた。

まさか眠らせる方法が子守歌とは…。

まだ薬を処方された方がマシだった。

まったく異性として見られていないような発言に、知らずと不満が募る。

しかし、そんな僅かな反応もモモにはわかるようで…。


「あれ、どうして怒るの?」

「怒っちゃいねェよ。なんでそう思う。」

自分で言うのもなんだが、ローは無表情だ。

なにも考えずに黙っているだけで、怒っていると勘違いされるくらい。

だからモモのように、自分の心情を当ててくる人間は初めてだ。

「なんでって…。今、機嫌悪くなったじゃない。あ、ほら、眉間のシワが1本多いわ。」

そう言ってモモは、おもしろそうにローの眉間を指差す。

眉間のシワだと?
コイツ、そんなもんまで見てんのか。

意外にも観察されていたことに恥ずかしくなり、さらに眉間を寄せた。

「ふふ、照れてる。」

「…ッ、照れて…ねェ!」

そんなとこまで見抜かれて、もはや彼女の顔を見ることすらできなくなる。


コイツ、ムカつく…!

こっちはモモが喜ぶことひとつ思い浮かばないのに、彼女はというと、こちらのことを全部わかっているかのようだ。

その差が不公平に思えて、なんだか堪らなく腹が立つ。

ああ、でも。
自分を見て笑うモモは、とても嬉しそうだ。

彼女の喜ぶポイントは未だわからないけど、その笑顔が見れただけでも良かったと思えた。


その笑顔を1番近くで見ていたい。

自分のものにしたい。

最初は笑顔を見れるだけでいいとすら思っていたのに、それが叶うと次々に欲求が生まれてきて。

人の欲とは恐ろしい。

せめてその欲をモモにぶつけることのないよう、今は気を引き締めるばかりだ。

ただでさえ、前回は失敗してしまった。

モモへの想いを自覚した今、またあんなに傷ついた目を向けられたら…。

自分はもう、どうしていいのかわからなくなるだろう。



/ 1817ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp