第40章 深海の島と海の森
ローとモモの部屋は隣同士。
だから部屋に戻るとなれば、必然的に共に歩くことになるわけで…。
「……。」
思い出のローではなく、今の彼に恋をしたと気がついたのは、つい数時間前のこと。
意識をしてしまうと、こうして歩いているだけでもドキドキと胸が高鳴った。
ああ、ヒスイがいてくれて良かった。
胸に抱くヒスイには、きっとこの高鳴りが伝わってしまっているだろうけど。
「……。」
ローはなにも喋らず、かと言ってモモもなにも話さないので、沈黙ばかりが訪れて痛い。
な、なにか話さなければ…。
そう思うけど、会話ひとつ思い浮かばないのだ。
先ほどのはしゃぎっぷりはどこに行ったんだろう。
初恋を知ったばかりの小娘じゃあるまいし、自分のウブさに嫌気が差した。
そんなふうにアレコレ話題を探していたから、ローが声を掛けた時には心臓が飛び出るほど驚いた。
「オイ。」
「…! ふぁいッ!?」
ああッ、どっから声を出してるの、わたし!
明らかに挙動不審すぎて、ローにおかしく思われたらどうしよう。
もしローが心の声を読む能力を持っていたのなら、モモは恥ずかしくて死ねる自信がある。
実は言うと世界には“見聞色の覇気”という、達人になれば心すら読める能力があるのだが、幸いローは見聞色よりも武装色の覇気が得意でモモの心を読めはしない。
しかしもし、ローが見聞色の達人であったなら、こんなに気持ちがすれ違うこともなかったかもしれないけど…。
「お前、今度は船で待つなんて言わねェだろうな。」
前回は船で留守番をしたために、モモが危険に晒された時、気づいてやれなかった。
だから今回は、例えモモが行かないと言っても連れて行くつもりでいる。
しかし、そんな心配はなさそうだ。
「今回はちゃんと行くわ。魚人島にもシャボン文化があるんですってね。楽しみ!」
いくら政府のお膝元と言っても、深海10000メートルには海兵になど、そうそう出会わないだろう。
だから魚人島は純粋に冒険できそうで、今からワクワクする。