第40章 深海の島と海の森
しばらくして船の振動が治まり、海獣の気配も消え去った。
「……静かになったね。」
恐る恐るといった様子でローに尋ねれば、彼は頷き、ようやくモモを床に下ろしてくれた。
「どうやら無事、魚人島に到着したようだな。」
「…ほんと!?」
未知なる島が見たくて、外へ飛び出したかったけど、窓の外を見たら船は未だ海中のようだ。
「アイアイ、魚人島の夜は明かりが少なくて、たいした店も開いてないんだ。上陸は朝まで待たないと。」
コーティングが剥がれてしまった今、無理に入国して、トラブルでも起こしてしまっては大変だ。
魚人島は逃げやしないのだから、朝まで待つくらいなんの問題もない。
「そっか、残念ね…。」
「まあまあ、楽しみは先に取っとけって言うじゃん? 明日になったら、俺が魚人島を案内してやるからよ!」
「マーメイドカフェに連れて行ってやるッスよ! あそこの人魚たちの美しさといったら…、グフフフ。」
シャチとペンギンは、残念がるモモを慰めようとしたのだろうけど、途中から邪念が入って2人の鼻の下が伸びる。
その様子に1歩引きつつ、モモは純粋に人魚に会ってみたいなと思った。
モモもコハクも、人魚や魚人に出会ったことがなかったから。
「それじゃあ、各自解散で明日の朝に上陸ってことで。」
ひとまず今夜は海中で夜を越すことになった。
シャボンに覆われた魚人島の狭間では、海獣は襲って来ないため、見張りも必要ない。
コハク、ベポ、シャチ、ペンギン、ジャンバールは男部屋へ。
ローとモモは自分の部屋へ。
モモはヒスイを連れて、まだ慣れない自室へと足を向けた。