第40章 深海の島と海の森
ガチャリ…。
「モモ、あんまりはしゃぎすぎて船から落ちるなよ。シャボンは多少の衝撃には耐えられるが、突き抜けることだってあるんだ。」
「あ、ジャンバール!」
船内から出てきたついでにモモを咎めたのは、数時間前、目を覚ましたばかりのジャンバールだった。
「お、ジャンバール。起きて大丈夫なのか?」
「ああ、モモの薬が効いたみたいで調子がいい。」
「さすがッスね、モモの薬は。」
シャチとペンギンに尊敬の眼差しを向けられるけど、モモは笑って誤魔化した。
本当は、癒やしの歌を唄ったからだなんて言えるはずもなく。
「ジャンバールの体力がバケモノ級なだけよ。」
そう言ってみんなには納得してもらうしかない。
一度言い損ねたセイレーンという事実は、告白するタイミングが難しい。
そうこうしてる間に、航海士のベポがやって来て進路情報を伝えた。
「みんな、もうすぐ海底に着くよ。…アイアイ、ジャンバール! 今度また勝手にケガしたら許さないからな。」
ついでに起きてきたジャンバールをひと睨みするのも忘れない。
本当は1番心配していたくせに、ベポはジャンバールにだけはそうやって先輩風を吹かすのだ。
しかし、そこらへんはジャンバールが大人で、素直に「ああ」と返事をするだけ。
心配の裏返しだってわかっているのだろう。
そんな2人の関係が、なんだか微笑ましくて温かくなる。
「さて、ここまでたいしたトラブルなく来れたが…。どんな化け物と遭遇しても不思議じゃねェ。お前ら、気を引き締めろよ。」
「「アイアイサー!」」
ローの忠告に従い、クルーたちはビシリと背筋を伸ばす。
え、そんなに危険なところなの、魚人島…。
まったくの戦力外であるモモは、タラリと冷や汗を垂らすしかなかった。