第39章 欲しいもの
時を同じくして、海軍本部。
海軍元帥サカズキは、とある“面倒”をひとつ抱えていた。
それは、天竜人による『お呼び出し』だ。
世界貴族なんてどうなろうが心底どうでもいいが、いくら己の正義を貫くサカズキとて、こればかりは無視するわけにいかない。
自分よりもっと上の政府上層部は、今でもも高貴なる血族を大事にしているから。
政府の加護は、天竜人である彼らをひどく腐らせた。
政府という権力をかざした天竜人には、どんな海賊といえども逆らうことができない。
そう2年前のあの日までは…。
2年前のあの日、とある天竜人を殴り飛ばした男がいた。
その男は、後にサカズキが殺し損ねた男。
そして今、天夜叉ドフラミンゴを倒したことで、世間を騒がせている男でもある。
ごく一部でしか知られていないことだが、ドフラミンゴもまた、天竜人の血族。
偶然とはいえ、麦わらのルフィという男は、天竜人を脅かす星の下にでも生まれてきたのかもしれない。
そして今日もまた、政府を恐れず、天竜人に一矢放った大馬鹿者がいる。
さすがに今度は麦わらのルフィではないはずだが、この事態をサカズキは元帥として傍観するわけにいかない。
かといって、自ら出向くような気になれず、本部から手練れの海兵を数人、軍艦と共にシャボンディ諸島へと向かわせた。
そろそろ確保、または撃破の連絡が入る頃合いだ。
「ぷるぷるぷる……。」
タイミングを計ったように、手元の電伝虫が鳴き始める。
「わしじゃ…。」
ガチャリと受話器を取ると、通信先はやはり、派遣した海兵からのものだった。
『元帥…、申し訳ありません! 天竜人に手を出した標的は、すでに島を出た模様です!』
なんと、逃げ足の早いことだ。
『追跡の許可をください!』
派遣された以上、標的の首を持ち帰らずして本部に戻れない。
そう海兵は言う。
見上げた忠誠心だ。
どこかの盲目の大将に聞かせてやりたい。