第39章 欲しいもの
その頃ペンギンはひとり、デッキで空を見上げていた。
すると後ろのドアがガチャリと開き、中からシャチが出てくる。
「あれ、お前ひとり? そろそろ潜水ポイントだってのに、船長はどこ行った…?」
さっきから姿が見当たらないと呟くシャチに、ペンギンは空を指差した。
「ほら、あそこッス。」
「んあ? あー、あれ、船長か。あと、モモ…。」
上空に見える米粒みたいなものを、見張り用の双眼鏡で覗いてみると、確かに2人だ。
「はーん、なるほどね…。」
そんな2人の姿を見て、シャチはなにかを察したように顎を撫でる。
ペンギンも夜空に浮かぶ2人を見上げ、黙った。
ウチの船長は、表情も言葉も少なくて、周りから「なにを考えているかわからない」とよく言われるけれど、実際のところはそんなこともない。
彼ほど、思ったことをすぐに行動に移す男は珍しいだろう。
だからかもしれない。
タイプ違えど、現在同盟中の麦わらの船長と気が合うのは。
なので当然、自分はもちろん、シャチもわかっていたことだろう。
船長にとって、彼女が“特別”であるということが。
自分たちの船長は、周りに大切なものを作りたがらない。
それはきっと、ドフラミンゴを倒すときに己の死を覚悟していたからに他ならない。
打倒ドフラミンゴ計画に、最後まで一緒について行くと言っても、彼は決して自分たちを連れて行ってはくれなかった。
それを嬉しく思う反面、悲しく思った。
でも、今は違うだろう。
戦い続けた彼には、傍にいてくれる“誰か”が必要だ。
船長は、その“誰か”にモモを選んだようだった。
それを心から嬉しく思う。
自分じゃわかってないみたいだけど、ウチの船長は守るものがある方が、ずっと強くなれるんだ。
彼女の気持ちは、自分なんかにはわからないけど、どうか想い合えますようにと願う。