第39章 欲しいもの
観覧車に憧れを抱いたのは、見たことがない乗り物だったから。
遊園地に羨ましさを感じたのは、そこで遊ぶ人がとても楽しそうだったから。
乗ってみたい、行ってみたい。
確かにそう思ったけど、まさかローが、そこまで気にしてくれているとは思わなかった。
そう思うと、目の前に広がる景色が、何倍も輝いて見える。
星って、あんなに煌めくものだったかな?
街明かりって、あんなに温かいものだったかな?
ローの優しさで、世界が違う色になった気がした。
ああ、あなたって、本当にわたしにとっての魔法使いね。
コハク、ヒスイ、ベポ、シャチ、ペンギン。
ジャンバールにメルディア。
モモの愛する人は、この世界にたくさんいる。
でも、世界の色をこんなにも簡単に鮮やかにしてくれるのは、いつだってローひとりなのだ。
今朝ローと別れてから、ジャンバールと話をして、決めたことがあった。
ローが帰ってきたら、聞いてみようと思ったこと。
『あなたにとって、わたしは特別なの?』
ローの気持ちが見えなくて、わからなくて、ずっと悩んできた。
わたしの身体だけが目当てなのか…と。
なんて愚かだったのだろう。
ローという人物を1番知っているのは、わたしよ。
他の仲間ではない、わたしが誰より。
6年離れていたって、これだけは自信を持って言えるんだ。
だから、わかる。
ローは、ただの女に、こんなに優しくしたりしない。
こんなに素敵な景色を、見せてくれたりしない。
不安になった自分がバカバカしい。
聞かなくたってわかるでしょう?
わたしは、ローにとって特別なんだ。
それがどんな感情であるによ…。
「ロー…。」
「……ん。」
ああ、この高鳴りをなんと言おう。
「すっごく綺麗…! わたし、幸せだわ。」
溢れる感動が押さえきれず、自然と笑顔になった。
「…バカか、大げさだ。」
そんなふうに呆れる彼が、堪らなく愛しい。
わたし、今日また、あなたに恋をしたわ。