第39章 欲しいもの
6年前といえば、ローたちはこのグランドラインを旅していた頃だ。
まだドフラミンゴを倒せるほどの力も計画もなく、ただ強さを求めて生きていた。
もしその頃、モモと出会っていたのが自分だったなら、なにか違っていただろうか。
そんなことを考えても仕方ないのに、ついつい過去に思いを馳せてしまう自分がいた。
「きっと天国のお母さんやお父さんが今のわたしを見たら、びっくりするんだろうなぁ。」
そう言ってモモは空を見上げる。
シャボンディ諸島から漂ってくるシャボンがふわふわと飛んで、なんとも幻想的だ。
死んでしまった人は、夜空に輝く星になるのだと誰かが言っていた。
だとすれば、あのどれかひとつに、父と母がいるのだろうか。
「カンランシャくらい高かったら、もっと近くで星が見られるのにね。」
地上と星が、いったいどれくらい離れているかなんて、モモにはわからない。
でも、空に近ければ近いだけ、あの星に近づいていくのは間違いないだろう。
「…なんて、少し湿っぽくなっちゃった。ごめんなさい、昔話をするの、久しぶりで。」
なんだか感傷的なことを言ってしまった自分が恥ずかしい。
照れ隠しに笑ってみたけど、ローは変わらず仏頂面のまま、黙ってこちらを見ている。
嫌な雰囲気にしちゃったかな? と少し後悔していると、ローがこちらに歩み寄り、距離を縮めた。
「……?」
なにかと思っている間に、ローはモモの身体を簡単に抱き上げてしまう。
「きゃッ、な…なに…?」
突然の行為に訳が分からずにいると、ローは説明もせずに手のひらを広げる。
“ROOM”
ブワリと広がったサークルは、空高くまで届き、いくつものシャボンを飲み込む。
「ちょ、ロー? なにしてるの?」
彼がなにをしようとしているのかサッパリわからず、だけど尋ねてみてもなにも答えてくれない。
“シャンブルズ”
混乱しているうちに、次の瞬間には冷たい夜風がモモの頬を叩いた。
「ふぇ…ッ」
船の上から一転、気を失いそうな高さの上空。
空に移動したのだと理解したときには、モモは情けない声を出してローにしがみついていた。