第39章 欲しいもの
船内から外に出ると、デッキにはモモがひとり小さくなったシャボンディ諸島を見つめていた。
「なにを見てる。」
後ろから声を掛けると、モモが振り返り、ふわりと微笑んだ。
「ほら見て、あの光。きっとシャボンディパークの光よね。こんな遠くからでも見つけられるってすごい。」
モモが指差す方向には、キラキラと光るシャボンディ諸島の一帯が。
あの歓楽施設は、観光客のために夜遅くまで営業している。
「カンランシャ、すごかったなぁ…。」
あんなに大きな乗り物、見たことがない。
てっぺんから見える景色は、いったいどんなものだったんだろう。
「観覧車なんかに乗りたかったのか?」
「だって、あんなに大きいのよ? 乗ってみたいじゃない。」
まったく興味がなさそうなローに、モモは力説する。
「あんなの、ただ高いだけだろ。」
「そんなことないわ。きっと空でも飛んでるみたいな感覚に決まってる。ローったら、乗ったこともないのに、夢がない!」
ただ高いだけって、何百メートルもあるのに、そんな一言で終わらせて欲しくない。
「…乗ったことならある。」
「えッ、嘘!?」
まさかの発言に、目を剥いた。
確かに、ローたちはシャボンディ諸島に来るのが2度目だって言ってたが、まさか前回乗ったのか。
でも、男だらけの海賊団で観覧車?
それはとても恐ろしい。
(…もしかして、女の人と乗ったのかな。)
ジャンバールは、ローが女嫌いだなんて言ってたけど、ただ単にみんなが見てないところで会っていただけなのかも。
だからと言って、モモにはなにも言う資格なんかないけど、モヤモヤする心にギュッと口を閉ざした。
しかし、そんなモモの様子にローは気がつかなかったようで、あっさりと真実を告げた。
「昔、故郷で家族と一緒に乗ったことがある。」
「……え?」
女の人どころか、シャボンディ諸島ですらなかった。
勝手に的外れな想像をしていたモモは、自分の妄想に恥ずかしくなる。
「妹がどうしても乗りてェと言うから付き合ったが、ただ高いだけの乗り物だ。」
しかし、隣で笑うラミが可愛くて、あの頃のローは幸せだった。