第39章 欲しいもの
みんな、知ってた…?
チラリとローを見つめると、コクリと頷かれた。
ローも?
じゃあ、今までモモがどう説明しようかと悩む必要などなかったのか。
なんだかすっかり拍子抜けしてまった。
でもまさか、コーティングまで出来るとは思っていなかったようで、シャチはしみじみと呟いた。
「いやぁ、でも本当にすげぇな。…ユグドラシルの知恵ってのは。」
「……ん?」
あれ、なんか…違くない?
「シャチ、今なんて?」
「ん、だからモモの力のことだよ。ユグドラシルの知恵って言うんだろ? ヤルキマン・マングローブがあんなシャボンを出せるなんて知らなかったよ。」
「??」
なんだかどうにも話が噛み合わない。
確かにモモはユグドラシルの知恵を授かっているけど、今のは全てセイレーンの力だ。
「ちょっとコハク、みんなになんて説明したの…?」
「……。」
あの時、街で騒ぎが起きて、コハクはモモの事情を説明しなければならなかった。
『母さんは、海軍や政府から常に追われているんだ。』
だから騒ぎのもとがモモであるかもしれないと、ローたちに知っていて欲しかった。
しかし、それを説明すれば、当然理由を尋ねられるわけで。
『海軍や政府に追われているだと…? なぜだ。』
この時、コハクは悩んだ。
なぜなら、モモがセイレーンのことを、そしてホワイトリストのことをローたちに話すつもりなのか、それとも隠すつもりなのかわからなかったから。
だからと言って今、ローに嘘も吐けない。
考えたあげく、本当のことを微妙に誤魔化して伝えることにした。
『ロー、母さんは…--。頭の中に、ユグドラシルの知恵っていう膨大な知識を持っているんだ。』
『ユグドラシルの知恵…?』
コハクはモモから聞いた昔話をそのままローに伝えた。
モモが海賊だった頃、世界樹の一部と出会い、戦い、そして倒した。
しかしユグドラシルにとって、死は救いであり、彼はモモに感謝したのだ。
その結果、モモは彼の加護を受け、世界樹の知恵の一部を授かった。
だから、政府に目を付けられ、狙われているのだと。
それは嘘じゃないけど、真実でもない。
そんな事実を…。