第39章 欲しいもの
モモが唄い終えると、役目を終えたマングローブたちは黄金のシャボンを吹き出すのを止め、ざわめきも落ち着いて普段の静けさが戻ってきた。
あまりにも現実離れした出来事だったから、もしかしたらさっきまでのことは夢だったのかもと思ってしまうくらいだ。
けれど、すっかりコーティングされた海賊船が、夢じゃないってことを教えてくれる。
「こんなに短時間でコーティングができちゃうなんて…。モモ、すごい。」
「うん…、ありがとう。」
成功して良かった。
やっぱり植物たちは想いに応えてくれる。
こうしてみんなの役に立てて、本当に嬉しい。
だけど…。
(この状況を、どうやって説明したらいいんだろう。)
勢いにまかせて説明もせずに唄い出したものだから、みんなさぞかし驚いただろう。
本当はセイレーンのことをちゃんと説明するはずだったのに。
今から後出しみたいに話したら、みんなはどう思うかな。
反応が想像できなくて少し怖かったけど、このまま説明しないわけにもいかない。
こんなことなら、もっと前に話しておけば良かったと後悔しながら口を開く。
「あの…、みんな。実はね…。」
「すげぇな、これがコハクが言ってたモモの力かー。」
いざ言おうと意気込んだところに、シャチの声が重なった。
でも驚いたのは、そんなことじゃなくて、その内容。
「え…ッ?」
今、なんて…?
「確かにすごい力だね! これなら海軍がモモを狙うのもわかるよ。」
「え、えっと…?」
ベポまでがしみじみと納得する。
なんだかみんなが訳知り顔で、モモは混乱してしまう。
いったい、どういうこと…?
「騒ぎが起きた時、コハクから事情を聞いたッスよ。」
「そ、そうなの!?」
驚いてコハクを見ると、彼は少しばつの悪そうな顔をした。
あの時、直感でモモが危険だと思った。
そして、みんなに協力してもらうには、ある程度の事情は話さないといけないと思ったのだ。
でも、ただひとつだけ、誤魔化した部分があるけれど…。
ごめん、母さん。
なんか、オレ。余計な気を回したみたいだ。