第7章 昔の女
夕暮れ時ともあって、酒場はとても賑わっていた。
「うっめー! 酒とメシ、どんどん持ってきて!」
「モモ、ちゃんと食ってる?」
「う、うん。」
日頃から思っていることだが、彼らはよく食べる。
モモはそんなに食が太い方ではないので、おにぎり2個もあればお腹いっぱいだ。
「ホラ、肉食え、肉。」
「えッ。」
大皿から取り分けた豪快な肉をモモの皿によそった。
肉の大きさに冷や汗が出る。
「お前、小せえからなぁ。いっぱい食わないと乳とか大きくならねぇぞ。…うほ、あの姉ちゃんセクシー!」
「……。」
シャチの言葉がザクリと刺さった。
貧相な体つきはモモのコンプレックスなのだ。
(お肉食べたら、あの人みたいな身体になれるのかしら…。)
シャチとペンギンが目をハートにして見る女性。
大きく開いた胸元からは豊満な胸が零れ落ちそうだ。
きわどい丈のショートパンツからは惜しげもなく白い脚が出ている。
彼女はこちらに気がつくと、妖艶に笑って近づいて来る。
「って、あの人…。」
2人がなにかに気がついたときには、彼女はすぐそこまで来ており、ローの隣へ腰掛けた。
「ロー、久しぶりじゃない。」
「…メルディア。」
「「メル姐さん!」」
メルディア、と呼ばれた彼女は、シャチとペンギンの方へと向き直る。
「あなた達も元気そうね。」
そしてモモへと視線を向ける。
「あら? あなたは初めまして、ね。…ロー、女の趣味、変わった?」
そう言って、当然のようにローの腕に自分のソレを絡める。
(え…。)
「離せ、暑苦しい。」
「あら、つれない。昔はあんなに愛し合った仲なのに…。」
ドクン、と心臓が跳ねた。
(愛し合った、仲…。)
「お前とそんなふうになった覚えはねェな。」
「ふふ…、嘘ばっかり。もしかして私があなたを裏切るようなマネしたこと、まだ怒ってるの?」
「いつの話だ。」
繰り広げられる会話に居心地の悪さを感じ、つい俯く。
「あ、モモ、メル姐さんは…えっと。」
「昔の女よ。」
ペンギンの言葉を遮るようにメルディアが答えた。