第39章 欲しいもの
モモとローが離れ離れになっていた6年間。
変わってしまったことはいくつもあった。
だけど、変わらないこともたくさんあって…。
例えば、わたしはやっぱりいつでもトラブルメーカーで、厄介事ばかり引き起こすこと。
そして、そんなわたしを助けてくれるのは、いつでもあなただってこと。
抱きしめられた腕に、体温に、安心しすぎて涙が出る。
彼の腕の中は、どうしてこんなにも居心地がいいのだろう。
「……ロー。」
攫われた恐怖を言い訳にして、彼の胸に擦り寄る。
そうしたら、安心させるように背中を撫でられ、そっと囁かれた。
「遅くなって悪かった。…泣くな。」
隠したつもりでいた涙は、すっかりバレてしまっていた。
ならばもういいや。と諦めて、みっともなく泣きじゃくった顔をローの前に晒す。
バカな行動をとってしまった自分に、呆れているかなって思ってた。
けれど、自分を見つめる彼の表情は、驚くほど優しい。
ごめんなさい。
ありがとう。
怖かった。
言いたいことはいくつもあったけど、まず1番に聞かなきゃいけないのは、そのどれでもない。
「ジャンバールは…?」
最後まで自分を守ってくれようとした彼の存在が、なにより気になる。
「お前、この状況で他人の心配か?」
「あ、当たり前でしょ。」
仲間の心配をしない人間が、いったいどこにいるというのだ。
「損な性格だな。」
もっと己の境遇を嘆いて、恐怖に震えていたっていいのに。
まあ、自分の心配より、他人の心配をする彼女だから、きっとローはこんなにも目が離せないんだ。
「ねえ、ジャンバールは無事なの?」
まさか、手遅れだったのか…と青ざめるモモに少し笑い、ちゃんと事実を教えてやる。
「大丈夫だ、コハクが治療にあたってる。」
「コハクが…!?」
ジャンバールの無事な姿を見たわけではない。
それでも、コハクならばジャンバールを死なせないとローもモモも、当然のように信じられた。