第39章 欲しいもの
シャボンディ諸島は広い。
この島にはいくつもの港があり、たった一隻の船を宛もなく探し出すのは不可能に近かった。
では、どうやって連れ去られたモモを探し出すか?
答えは簡単だ。
モモを連れ去ったのは、天竜人。
島に港が数あるとはいえ、実はそれぞれ停まれる船が決まっていた。
例えば、繁華街やホテル街のある観光エリアには当然海賊船は停められない。
だから今回ように政府の目が届かない無法地帯グローブに停泊させるが、逆に言えば、天竜人ほどの船ともあれば、停める港は限られている。
派手で目立ちたがりの彼らは、いつだってシャボンディ諸島の象徴である遊園地、シャボンディパークに近い30番グローブに停泊しているのだ。
目的地さえわかっていれば、追いつくことなど容易い。
能力を駆使して上空から船を探すと、シャボンディパークのすぐ近くに、持ち主と同じような派手さを兼ね備えた、豪華絢爛な船が停泊しているのが見えた。
(モモ…。)
あの中に彼女がいる。
今、ゲスな天竜人に虐げられているかもしれない。
そんな光景を想像したら、胸の内にマグマのような怒りが湧き上がってくる。
ジャンバールをあんな目にあわせた怒りも混ざり合って、胸のマグマはメラメラと燃え上がった。
(ぶっ殺してやる…。)
勝手に人のモンに手を出しやがって。
身のほどを知れ。
天竜人だろうが、なんだろうが知ったことか。
俺からアイツを奪おうとするヤツは、誰であろうと許さない。
上空から船に侵入すると、都合がいいことに近くの部屋から誰かの話し声が聞こえた。
ちょうどいい、捕まえてモモの居場所を聞き出してやる。
『女~、今ここでわちしを愛すと誓えば、シツケは1日で勘弁してやるえ…。』
胸くそ悪い話し方。
天竜人だ。
では、女というのは…。
すぐに誰のことか思いいたり、聞いた言葉が怒髪天をつく。
誰が、誰を愛するって?
怒りに身を任せ、船を破壊しようとしたとき、モモの凛とした声が響いた。
『冗談じゃないわ…ッ! わたしが愛する人は、生涯ただひとりだけよ!』
その言葉は、チャルロスだけではなく、ローの胸も貫いた。