第39章 欲しいもの
チャルロスは、自分が欲しいと思ったものが全て手に入ると言うが、それは嘘だ。
今彼が手に入れてると思ってるものだって、本当はなにも手に入っていない。
ただ、それに気がつけないだけ。
「あるわ。わたしの心は、絶対に手に入らないもの。」
その他にも、もっともっとたくさんあるけど、チャルロスが1番わかりやすいものを上げた。
「…おかしなことを言うえ。おばえはもう、わちしの妻だえ。」
「そんなわけないじゃない。あなたがいくら言い張ったって、わたしは妻になることはないし、あなたを愛することもないわ!」
おバカなチャルロスにもわかるよう、ハッキリと睨み上げながら告げた。
「ううぅぅ~…ッ!」
さすがにそこまで言われたら、頭の緩いチャルロスとて気がつかないわけがない。
顔を真っ赤にさせ、ぶるぶると震えはじめた。
今にも怒りが爆発しそうなチャルロスに、付き人たちもオロオロとしはじめる。
彼が本気で怒り出せば、どんなとばっちりがくるかわかったものではない。
それでも、モモは言い続けるのを止めなかった。
「あなたの手の中にあるものは、全て嘘や偽物に違いないわ。それに気がつけないだなんて、可哀想な人。」
愛も感動も、本物がどれほど美しいかを知らずにこれからも生きるのだろう。
「偽物~!? 言わせておけば、おばえムカつくえ~ッ!」
否定されたことなど今までなかったチャルロスは、モモの言葉にひどく憤慨し、目を充血させる。
「優しくしていればつけあがりおって…! キツくシツケてやるえ!」
怒りのまま腕を振るうと、握られた鞭がしなり、ヒュン…と空を切る音がした。
バチン…!
「--ッ」
足元に鞭が叩きつけられ、上質な絨毯の毛が舞う。
当たれば痛いどころじゃすまされないことは容易に想像がつく。
今謝れば、身体に消えない傷跡が残ることはないかもしれない。
でも、例え傷だらけになったって、自分の気持ちを撤回するつもりはない!