第39章 欲しいもの
モモの反応を勘違いしたチャルロスは、むふむふと鼻息荒く、新しい妻の願いを叶えてやろうとする。
「むふーん、おばえを第1妻にしてやりたいが、それは無理だえ。」
「…なに言ってるの?」
だれがあなたなんかの第1妻に…、いや、第100だって妻になるものか。
そんな思いが込み上げるけど、チャルロスはモモのことなど構わず話を続ける。
「わちしの第1妻は、同じ天竜人でなくてはダメだえ。おばえがいくら美しくても、わちしの正室にはなれないのだえ~。」
「そんな事情なんか知らないわ。わたしはあなたの妻にならない。」
なにを勘違いしているのかと言ってやったつもりだが、チャルロスはなにかを思案するようにウーンと悩んだ。
「おばえがそこまで言うのなら、第5から第12妻を下々民に戻してもいいえ。」
「……は?」
この男には言葉が通じないらしい。
いや、捕らわれた他の女性たちを解放してくれるなら、そうしてもらいたいけど。
「おばえを正室にするのは無理だが、安心するえ、特別にわちしの子供を産ませてやるぞえ。」
「--ッ!」
おぞましい発言に言葉を失った。
チャルロスの子供を産むだって?
冗談にしたって笑えないことを投げかけられ、顔が引きつる。
でも、ここで彼に連れて行かれてしまえば、その冗談が冗談にならないことに、今さら気づいた。
あのジャンバールでさえ、長年捕らわれ、奴隷としてモノのように扱われてきたのだ。
例えモモがどれだけ嫌がろうとも、この世界の中では天竜人の言うことはなんでも叶えられる。
チャルロスは気づきもしないのだ。
子供というのは、愛する人と育んだ、愛の結晶なのだということを。
この歪んだ世界で生きる彼には、その結晶が宿ったときの幸福感を、決して味わうことができないんだろう。