第39章 欲しいもの
「ねぇキャプテン、どういうこと? なんでジャンバールがここにいて…。モモはどこにいったの?」
ベポがキョロキョロと辺りを見回すけど、当然モモの姿なんかない。
コハクもいるんだ、まだ言わない方がいい…。
けれど、ジャンバールはローが動かないのならばと、仲間たちに縋る。
「モモが…、天竜人に連れ去られた…ッ。俺のせいだ! 頼む、助けてやってくれ…!」
彼女の無事を確認できるまでは、おちおち気を失うこともできない。
「ええッ、なんだって…! 天竜人に!?」
彼らに連れ去られたということは、美しいモモの容姿を気に入られ、傍に置こうとされているのだと容易に想像がついた。
「じゃあ、早く助けに行かねぇと! このまま聖地に逃げ込まれたら、いくらなんでも助け出せねぇよ!」
みんなが そうだそうだと慌てる中、ローだけが冷静に言う。
「ジャンバールのオペが先だ…。」
「で、でも、船長!」
「モモは攫われこそしたが、生きている。なら、あとでいくらでも取り返せばいい。助けられるヤツから先に救う。…当たり前だろ。」
そうは言うものの、実際は聖地マリージョアへの侵入がとても難しいものだとわかっていた。
聖地に海賊が侵入ともあれば、当然大将クラスの海兵と戦闘は避けられないし、下手すれば“赤犬”が出向くかもしれない。
いくらローとて、その無謀さがわからないわけもない。
しかし、モモを助けに行ってからジャンバールのオペをするのでは、彼が手遅れになる。
目の前に助けなければならない命があるなら、優先順位は“患者の重傷度”だ。
それは、医者としての決断。
ローは医者だ。
その決断を曲げることはできない。
例え、本心では今すぐモモのもとへ向かいたくとも…。