第39章 欲しいもの
まったく信じてくれない仲間たちに、なんとか想いを伝えたい。
誰に言えば、この中の誰に言えば、わかってもらえるだろう。
拳をキツく握りしめ、コハクはひとりの男を見上げた。
ローだ。
「……。」
なぜだろう、仲間の中では明らかにローとは1番信頼を築けていないはずなのに…。
だって、ローは他のみんなと違って無駄なおしゃべりや悪ふざけなど、いっさいしない。
だから必然的に一緒にいる時間も少ないし、彼の考えていることなどわからない。
でも、コハクの直感は告げるのだ。
ローなら、自分の言うことを信じてくれると…。
「ロー…ッ、オレの話を聞いてくれ!」
「……なんだ。」
やっぱり無駄なおしゃべりも悪ふざけもしない。
いつものローのまま、真剣に聞いてくれる。
「前に母さんが今までずっと島から出なかったのは、自分を許せないからだって言ったけど、本当はそれだけじゃない。」
「……? どういうことだ。」
以前ローたちに、なぜモモは島から出ようとしないのか? と尋ねられたとき、コハクは贖罪のためだと答えた。
それも決して嘘ではないけど、本当はもうひとつ理由がある。
それは、今もモモがみんなに隠していること。
「母さんは、海軍や政府から常に追われているから、だから島から出られなかった。…自分を守るために。」
「海軍や政府に追われているだと…? なぜだ
。」
モモは昔、白ひげ海賊団の一員だったと言うが、いくら かの有名な海賊団であっても、たかだか薬剤師を追い回すほど、海軍もヒマじゃない。
「……。」
どうしよう、と葛藤した。
モモが言わないのに、自分がみんなにバラすのは、なんだか違う気がする。
でも、半端な言い分じゃ、彼らに信じてもらえるかわからない。
(よし……。)
コハクは心を決め、ローを見つめて口を開いた。
「ロー、母さんは…--」